室町・江戸時代の日本酒を再現。歴史の島・隠岐から日本文化を発信する「隠岐酒造」

銘酒「隠岐誉」に使われる山田錦の栽培地

島根半島の北方、40〜80キロの日本海に浮かぶ隠岐は、4つの有人島と、他の約180の小島からなる諸島です。

(一社) 隠岐ジオパーク推進機構のサイトより

「古事記」の冒頭にある「国産み神話」によれば、イザナギとイザナミによって、淡路島、四国に次いで3番目に生み出されたのが、現在の隠岐諸島なのだとか。
そんな歴史ある風光明媚な隠岐諸島唯一の酒蔵「隠岐酒造」を訪れました。

隠岐の島は、良水の宝庫

周辺の豊かな自然と清らかな川

島根県には、昭和60年に環境庁(現環境省)により「昭和の名水百選」に選ばれた2箇所の湧水があります。そのどちらもが隠岐の島に存在していると知り、とても驚きました。
隠岐の島は靄(もや)や霧が多く、それを森が蓄えることで、天然に濾過された清らかな伏流水になります。
隠岐酒造は、その清冽な伏流水を仕込み水に使用し、銘酒「隠岐誉(おきほまれ)」を醸しています。

良い酒は、作り手の仲間意識から生まれる

隠岐酒造社長 長谷川さん

今回インタビューにお答えいただいたのは、隠岐酒造の社長である長谷川哲さん。
長谷川さんは、「作り手の仲間意識がないと良い酒ができない」と明言します。

「各工程に責任者がおり、責任者が納得した状態で次の工程にバトンタッチする。最後に杜氏が酒をまとめ、ようやく良い酒ができます」

隠岐酒造の合言葉は、「酒質の向上に天上なし」。
毎年原点を尊重し、蔵人が一丸となって酒造りをしています。
「私たちにできることはまだまだある」と言う長谷川さんからは、蔵人達との絆と、限りない向上心を感じました。

 

究極の目標は、「白いごはんのような日本酒」

長谷川さんは、「白いごはんのような日本酒」を造ることが究極の目標だ、と話します。これは、食中酒として違和感のないお酒、という意味です。

「白いごはんは、不思議なことに一生食べても飽きません。しかも最近は、温かくてももちろん美味しいが、冷めても美味しいお米が作られている。私たちが目指す究極の日本酒は、そこだと思います」

どんなおかずにも合って、冷やしても燗でもうまい日本酒が究極の目標と長谷川さんは語ります。

「食中酒というのは、香りが強すぎてはだめ。ただ、心地よいと感じる程度の香りは必要です。心地よい香りは酒の品格を生み出します。少し酸味があって口を爽やかにしてくれる作用があったり、スッキリした飲み口、後味のキレ…など、総合して食中酒として美味しい酒を目指しています」

長谷川さんのお話を聞くと、隠岐誉をどんな食事と合わせようかとワクワクしてきました。


室町と江戸の酒を再現するきっかけとは

隠岐酒造には、「隠岐誉 室町の純米酒90」と「隠岐誉 江戸の純米酒90」という、当時の日本酒の味を再現した非常に個性的な商品があります。

いったいどういった理由で、この商品が誕生したのでしょうか。

「このお酒は、約30年前に歴史好きだった初代が提案し、島根県の先生に相談、また技術的なご指導を受けながら製造が始まりました。酒とは何ぞや、と突き詰めて考えると、昔の酒を知りたくなる。日本酒の原点を考え、より日本酒を好きになってもらいたい、という想いがあります」

歴史ある隠岐で、当時の日本酒を再現することには大きな意味があると感じました。


当時の日本酒の製造工程は?


長谷川さん曰く、室町時代には,、現代に通ずる酒造りの基本がほぼ確立されていたそうです。製造工程自体は現代とほとんど変わりませんが、大きく異なる点は「精米」です。

「室町時代には、精米機が無かった。そのため、臼と杵でついて籾殻を取り、玄米の外周の皮をほんの少し削る位で造っていたようです」

「隠岐誉 室町の純米酒90」と「隠岐誉 江戸の純米酒90」の90という数字は精米歩合のことです。精米歩合90というのは、およそ9割方米を残し(1割を削り)、醸されているということを意味します。
また、「蒸し」や「麹を作る」技術は室町時代にもあったが、お酒を搾る技術は現代に比較すれば劣っていたのではないか、と長谷川さん。

「味は室町や江戸の味を再現しているけれども、見た目はおそらく違う。当時の日本酒は搾った直後は濁っていたため、ある程度時間をおき、上澄みを掬って飲んでいたと聞いたことがあります」

磨かない酒もうまいんだと感じてもらいたいですね、と長谷川さんは話してくれました。


隠岐誉と伝統文化を発信する使命感

長谷川さんは、「日本酒は國酒(こくしゅ)。日本の文化です」と語ります。

「伝統・文化を守るために私たちはお酒を造っています。伝統を絶やすわけにはいきません。これからも、隠岐から日本の伝統・文化を発信していきます」

現在、隠岐酒造の製造した日本酒の5割以上が島内で消費されていますが、島の人口減少に伴い、島内の消費量は減り続けているといいます。長谷川さんは、日本の文化である日本酒を、島外にも広めたいと話します。

「ただ、地元で愛されないお酒が、外で愛されるはずがないと思っています」

長谷川さんの言葉からは、地元に愛される酒造り、そして、日本の伝統と文化を守り続けるという使命感を強く感じました。

「隠岐誉」の今後の伝統・文化に対する取り組み、新しい情報発信が期待されます。


室町と江戸に想いを馳せて、当時の日本酒を飲んでみよう

 
鎌倉時代末期には、後醍醐天皇が隠岐に流され、隠岐の文化形成に大きく影響したといわれています。後醍醐天皇は隠岐から倒幕に動き、その後室町時代が訪れました。
「隠岐誉 室町の純米酒90」は、まるでデザートワインやドライフルーツを思わせる超甘口でとろりとした口あたりが特徴です。

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江戸時代の隠岐の港には、多くの商業船が停泊していました。寒流と暖流がぶつかり、豊かな漁場として栄えた隠岐は、上方(大阪)と蝦夷地を結ぶ北前船の風待ち港として、賑わいをみせていたということです。
「隠岐誉 江戸の純米酒90」は酸味が強く、辛口の白ワインやシェリー酒を連想させる味わいです。

現代の日本酒とは全く違う味わいの日本酒を、ぜひ一度飲んでみてはいかがでしょうか。日本酒の歴史を知り、当時の味を知ることで、ますます日本酒を好きになっていただけたら幸せです。

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