酒米とは、日本酒の原料に使われるお米のことです。
1口に行ってしまえば簡単ですが、日本酒を語るうえでは外せない存在なのです。
そこで今回は、酒米がどのようなお米なのか、ふつうのお米とどう違うのか解説します。
酒米ってどんなお米?
酒米とは、日本酒を造るのに適した米のことであり酒造好適米とも呼ばれます。
厳密にいえば酒米はお酒を造るために用いられる米を指すため、一般的な白米も含まれることになりますが、酒造好適米は農林水産省によって「醸造用玄米」として定義づけられています。
つまり、酒米は結果として酒の原料となったお米を広く指し、酒造好適米は日本酒の原料とすることを目的として生産されるお米なのです。
そして、日本人が日常的に食べる白米と比較すると、酒造用の米は生産量も非常に少ない貴重な存在です。
その生産量は食用米を含めた全体の5%であり、酒造好適米になるとその内の僅か1%しかありません。
その背景には酒米の栽培自体の難しさが挙げられます。
酒米は一般的な白米と比較して粒の大きさが大きく成長します。
そのため稲が倒れやすく、害虫の被害も受けやすいのです。
さらに、収穫量自体が少なく、高い技術と専門的な知識が要求されます。
以上のような理由から、価格も高くなる傾向にあることから、安い価格で流通している日本酒には、酒造好適米や酒米ではなく食用の米を用いて造られたものも数多く存在しています。
食用の白米との違い
日本酒造りに使われるお米と日常的に食べられる白米は、同じものではありません。いくつかの違いがあるのです。
ここでは、その違いを3つ解説します。
タンパク質が少ない
酒米最大の特徴とされているのが、成分中に含まれるタンパク質の少なさでしょう。
ご飯として食べる白米には、タンパク質や脂質といった成分が多く含まれています。
タンパク質や脂質はお米の旨味やツヤを生み出しますが、そういった成分は日本酒造りには向いていないと言われているのです。
タンパク質は分解されるとアミノ酸に変わりますが、日本酒にとっては雑味が生まれる原因の1つ。
お米に含まれるタンパク質は少なければ少ないほど、繊細な味わいの日本酒ができると言われています。
1粒が大きい
酒米は、一般的な食用の白米と異なり、高精白に耐える必要があります。
精米歩合は30%以下になることも珍しくありません。
そのため、酒米の粒には大きさと粘り気が求められ、長時間の磨きこみと熱に耐えられるだけの強度も必要になるのです。
心白がある
心白とは、酒米の中心にある白色の芯のことです。
この芯は、内側と外側の分子結合が異なることによって生まれるものであり、細かいヒビが入っています。
このヒビに麹菌が上手く定着することで、良質な麹が造られるのです。
酒米の代表的な品種
酒米は、現在120種類近くの品種が存在しています。
ここでは、特に代表的な酒米を4種類紹介します。
『山田錦』
山田錦は、数ある酒米の中でも王様と呼ばれるほど、ブランド力・知名度共に高い酒米です。
生産量も日本一の品種であり、生まれ故郷である兵庫県を中心に日本各地で栽培されています。
『五百万石』
五百万石は、山田錦に次いで知名度のある酒米です。生産量も山田錦に次ぐ量です。
新潟県を始めとして広い地域で生産されており、この酒米で造られた日本酒は淡麗ですっきりとした味わいに仕上がると言われています。
『美山錦』
美山錦は偶然生まれた奇跡のような酒米です。
元になったのは「たかね錦」と呼ばれる酒米で、放射線処理を行った際に突然変異を起こしたことによって発見されました。
たかね錦より心白の発現率が高く、粒が大きかったことから栽培が始まり、現在では長野県や東北を中心に栽培されています。
『雄町』
酒米の原種とも言われているのが雄町です。
江戸時代の末期に発見されたとされ、一時期は幻の酒米と言われるほどに生産量を減らしていたものの、一部の酒蔵の手によって復活されたことも話題になりました。
雄町を使って造られた日本酒に心酔する「オマチスト」と呼ばれる熱心なファンが多いのも特徴で、野趣にあふれ、丸みのあるふくよかな味わいに仕上がるとされます。
酒米を知って、日本酒を知ろう
酒米の違いによって、日本酒の味や香りは全く異なります。
酒米の素性を知ることで、日本酒の奥深さを知ることにも繋がるでしょう。
お気に入りの1本を飲み続けるのも良いですが、たまにはいつもの日本酒とは異なる酒米が使われている日本酒を飲むと、新しい発見があるかもしれません。