とくに日本酒初心者や強いアルコールが苦手な方には、飲みにくいイメージの日本酒ですが、甘口ならアルコール度数も低く、抵抗なく飲める銘柄がたくさんあります。
とはいえ「甘口の日本酒を飲みたいけど、辛口との違いや見分け方が分からないし、種類がありすぎてどれをを飲んだらいいかわからない」 と、悩まれるかと思います。
この記事では、日本酒甘口のつくりかたや見分け方、おすすめ銘柄を紹介します。日本酒の甘口が何かわかり、お気に入りの1本が選べるようになりますよ。
甘口の日本酒、辛口とのつくりかたの違い
日本酒のつくりかたと甘口・辛口の分かれ道
日本酒の原材料は、米・麹・水が基本です。
米を精米し、蒸したものに、麹を加えて糖化させるとブドウ糖ができます。このブドウ糖に酵母を加えて発酵させるとアルコールができ、日本酒になります。
その際、ブドウ糖を十分に発酵させれば辛口に、酵母の活動を少なくしたり、短くしたりして、発酵をおさえると、甘口になるのです。
たいていは、三段仕込みといって、原料を3回にわけて投入するのですが、甘口にする場合、さらにもう1回追加する、「四段仕込み」がおこなわれることもあります。発酵が進むとアルコールが増えますが、再び米を添加することで甘口になるそうです。
原料の違い・にごり酒について
他にも、原料の米の違いでみると、軟質米(愛山・雄町・山田錦などの品種)の方が甘口になりやすいといわれています。
また、濾過をしっかりおこなったクリアなものよりも、にごり酒のほうが甘く感じる傾向にあります。
醸造アルコールが添加されていると辛口になりやすい
人の舌はアルコールの刺激を辛いと感じるため、糖が多いほど甘口、アルコールが多いほど辛口に感じます。
「醸造アルコール」は、主にサトウキビを発酵させて蒸留したアルコールです。これが添加してある日本酒は、どちらかといえば辛口になります。
醸造アルコールは、味をまとめる、クリアで引き締まった味わいにする、華やかな香りをつけるといった作用がありますが、アルコール度数が高くなるので、辛口になりやすいのです。
甘口の日本酒の選び方・4つのポイント
日本酒の甘口の作り方が分かったところで、次は見分け方、選び方をみていきます。日本酒の甘口を見分けるポイントはおもに4つあります。
日本酒度がマイナス
「日本酒度」とは、アルコールと糖の量を表す数値で、プラスになるとアルコールが多く、マイナスになると糖が多くなります。
糖が多い=マイナスの数値が高いほど甘口になりやすいのです。
記載のない銘柄もありますが、パッケージに書いてある場合も多いのでチェックしてみてください。ちなみに「-6.0以上が大甘口、-3.5~5.9が甘口、-1.5~-3.4がやや甘口 -1.4~+1.4普通」が目安です。
酸度が低い
「酸度」とは、日本酒の製造過程で発生する、乳酸・コハク酸・クエン酸・リンゴ酸など、さまざまな酸がどれだけ含まれているかを表す数値です。
酸が多いと味が引き締まり、キレ、コクが増します。
キレや引き締まった味わいは、刺激にもなるので、辛口になる傾向がありますが、コクのある甘口もあるので一概にはいえません。 また、この酸度は、後でみる「濃淡度」にも影響します。
アミノ酸度が高い
アミノ酸は「旨味」の成分の数値です。アミノ酸度が高いと、コクのある濃厚な味わいになるので、甘口になりやすい傾向があります。
「濃淡度」淡麗か濃醇か
(参考) https://www.kuramotokai.com/omosiro/zemi/id/1
もうひとつ、日本酒の味をあらわす指標に「濃淡度」があります。
「濃淡度」は、日本酒を淡麗が濃醇かに分けた指標のことで、甘口でみた場合、「淡麗甘口」は、酸度1.5以下、日本酒度+1以下で、キレがありスッキリしており、ほんのり甘く優しい味わいのものになります。
反対に、酸度1.5以上、日本酒度-1以下の「濃厚甘口」になると、まろやかでコクがあり、深く濃厚でボリュームのある感じの日本酒になります。 どんな雰囲気の日本酒が見分ける指標になるでしょう。
とはいえ日本酒は、原料の米、つくりかた、アルコールと糖のバランス、酸の種類や量など、さまざまな要素が複雑に絡み合って醸し出されるものですし、個人の感じ方も人それぞれなので、これらの数値はあくまでも目安ということに注意が必要です。
本格派からスーパーで買える、日本酒甘口おすすめ3選
日本酒の甘口を見極めるコツが分かったとはいえ、すべての指標を調べて選ぶのも骨が折れます。
おすすめを3つ紹介しますので、気になる銘柄から挑戦してみてください。
「極上の甘口」
(https://www.ozeki.co.jp/product/nihonshu/gokujyo_amakuchi.html)
ワンカップなどで有名な大関から「極上の甘口」。その名の通り、「日本酒度-50、酸度2.3、アルコール10%」の濃醇で超甘口な日本酒です。
ふくよかでコクのあるお米の甘さがありますが、しつこくはないので、飲み過ぎに注意が必要なお酒です。冷やしてのむとスッキリ楽しめ、デザートや食前酒にもふさわしく、あっさりめのチーズにも合います。
「澪mioスパークリング清酒」
(https://shirakabegura-mio.jp/)
宝酒造松竹梅白壁蔵の「澪mioスパークリング清酒」。こちらは「アルコール度数5%、日本酒度-70、酸度4.0」の気軽に楽しめる新感覚の日本酒です。 甘くて酸味もありサイダー感覚で飲めるので、よくも悪くも日本酒らしさはあまりなく、アルコールが苦手な方にもぴったりです。
生ハムなどの塩気の強いものから、チーズケーキのようなさっぱり系のスイーツなども合いますよ。
「富久錦純米Fu.」
(http://www.fukunishiki.co.jp/products3.html)
兵庫県にある富久錦の「富久錦純米Fu」。「アルコール度数8度、日本酒度-60、酸度5.5」とフルーティーな酸味がきいた、甘酸っぱい日本酒です。無化学肥料栽培の米を使用しており、お米由来の甘さが、スッキリ楽しめます。常温でも冷やしても、食前酒にもデザート酒にも合うという、いろいろな飲み方を試してみたくなるお酒です。
おわりに~日本酒甘口の奥深い世界を楽しもう~
以上、日本酒の甘口のつくりかたや選び方、おすすめ銘柄について説明しました。ひとくちに日本酒甘口といっても、銘柄によって千差万別ということが分かっていただけたかと思います。
日本酒度などさまざまな指標を参考にしながら、お気に入りの1本をぜひ見つけてみてくださいね。